レオナルドにトマトソースはそぐわない。
 クリームがベースでピクルスとアンチョビは避けて通る。彼が最高なのは、その生地の部分。白く焼き上がった中身と膨らませた耳はどんな身でも深く受け入れる。ぎっしりつまってからっとあがる底生地は、盛りつけられた具材を均等に美しく別つ。焼き上がりは誰の目から見ても望ましく、どの口にもぴたりとはまる。けれど、望まれないことも多くある。彼が出向く場所はだいたいパーティ会場か、お決まりの式典か給食かなんかの、来る相手をえらべないところばかり。一口も食べてもらえないこともあれば、そのまま冷えて冷蔵庫行き、朝食の味気ない添え物になることも少なくない。誰もが一度は食べたことがあるものの、味を聞いてもおざなりの感想しかでてこない。ひとりで相手をするには物足りないのだが、どの店も必ずメニューにのせるし、レオナルドは役目をきっちりこなすのが常。でも彼を頼むときには何か一品くわるのがモアベター。

 ドナテロはいつだって残り物を買ってでる。
 ベースはどれでもいいがどれも一番ではないのがやっかいなところ。生地も薄くて見た目はどうも味気ないが、ちょっと変わった人の変わった注文に応えられるのが彼の特徴だ。例えば上に納豆のみとか、刺身にソース、メロンとパイナップルに生クリームで、もう一枚彼をのせて、お好み焼きにしてくださいとか。彼を食べた人は最初は首をかしげるものの、それがなぜなのかわからなくてもう一度注文してみるもやはり解明できずに、もう一度、となるのがお決まりのパターンだ。実は生地に特性のスパイスを混ぜ込んであるのだとか、ロックスターが死ぬ直前にドナテロを注文していたとか、とにかく話題に事欠かない。それをどう思っているのか本人に聞いてみたところ、意味深な笑みを浮かべて、"食べてみれば分かるよ"とのこと。すみません、彼を一枚頂けますか、支払いはクレジットカード一括で。

 ラファエロにはチリ。誰だってそう言う。
 育ち盛りの男の子で彼を知らないものはいない。誰もが一度は家で作ろうと試みるがたいていは失敗する。もちもちの生地は熱をよく吸収するので家のオーブンだと際限なく膨らんで、せっかく綺麗に並べた具材が全部こぼれて台無しになってしまうのだ。やはり彼は竈でもって常に見張っていなければ。具材はぶつ切りのベーコン、ツナ、サラミにソーセージ、パプリカ、コーン、ガーリックなんだっていい。ごたまぜにした中身を分厚い生地にたっぷりのせて焼き、できあがりを一口で頂くのが理想。男の子の集まりになるともうあっという間になくなってしまう。ところで、女性から好まれないのが彼の悩み。辛すぎるって話だが、ほんとうのところ年頃の女の子なら服に赤いシミなんかつけられないのだ。彼女たちが好きなのは、ラファエロをぺろりと平らげてしまう男の子のほう。でもときどき無性にあの味が恋しくなってしまう彼女の気持ちは、彼には一生かかっても分からないのだ。

 ご存じの通りミケランジェロは、トマトソースでないと死んでしまいます。
 苦手なものはトリュフ、シーフード、バジルなんかの絶妙なバランスでもって保つ食材。その反対に生地ときたら変幻自在、自由奔放、かりかりにあがった半分と白くふくれた半分を合わせてミケランジェロハーフ、もしくはチーズを間に挟み込んだっていい。形も自由に変えられるので、記念日の贈り物にはぴったりはまります。具材はなるべく1、2種類を基本に、得意技のポテトとチーズをコンビにすれば向かうところ敵なし、箱を開けて笑顔にならない人を見たことがない。ただ完全にパーティ要員なので、食されるというよりは遊ばれることがほとんど。子供たちにパイ投げの道具にされるときも彼はおおげさにまわって派手に中身を撒き散らすので、投げられるほうはたまったもんじゃない。投げる方は楽しくてやめられない。そろそろ日も暮れることですし、走って帰って夕食に、そろって彼らを並べませんか。